空手の基本や型が試合で有効かどうか

こちらの動画はWKF(世界空手道連盟)が主催する数々の世界選手権でタイトルを獲得しているアガイエフのトレーニングの動画です。試合を想定した合理的なトレーニングです。この動画では伝統的な移動稽古や基本稽古は見られません。さらにいえば、現在彼に関する公開されている動画では型や基本などの練習は完全に排除されています。トレーニングの大部分が瞬発力や体の機動性を向上させるエクササイズに集約されています。

私の空手の先生はよく”空手の型や基本が組手の技を構成している。だから、基本や型の練習は組手の練習より比重を置かなければならない” ということをよくおっしゃてました。そんな先生のもとで私が空手を始めた頃は練習の9割以上は基本と型でした。

当然のことですが、当初は試合ではほとんど勝つことはできませんでした。試合に勝つには試合のための練習をしなければならないのです。見てわかる通り、空手の基本や型の体の使い方は現代の試合競技からは大分遠ざかっています。

現代の空手競技の性質から考えれば、組手競技で勝つことを目標にするとすれば、型や組手はもはや過去の遺物。役に立たないどころか動きをさらに鈍くする厄介な練習メニューでしかないのではないでしょうか。

現代の空手競技と船越義珍の門弟が習得した技を試すために設けた試合とは全く別物です。現代では技の強さや、型や基本に隠された技の使い方を研鑽して試合に生かすことは無理でしょう。

なぜなら現代の空手の型や基本はアガイエフが行なっている試合用のエクササイズとなんら変わらない、体を効果的に使えるにするための単なる鍛錬動作でしかないからです。

しかもその鍛錬動作も技を生かせるポイントが今と昔とでは違うとなれば、型と基本を捨ててキックボクシングや体の瞬発力を養うエクササイズに活路を見出すのは自然なことです。

型や基本が作られた実践主義の背景と試合競技でより高みを目指す現代の空手界の背景とではあまりにも空手に求める性質に違いがあります。

生涯伝統武道として空手を追求していく人は別として、試合競技で高みを目指すならば、基本や型を念入りに行うことは遠回りのように感じます。むしろキックボクシングや総合格闘技を並行してやったほうが勝率は上がる可能性があります。

また空手の型や基本は、外的な体の機動性や使い方だけではなく、本来は丹田の操作、呼吸法、脱力、無の精神など体の内部そして精神を効果的に練ることによって技の練度を向上させるものなので、たとえ基本中の基本である追い突きであっても人によっては習得するまでに生涯かかります。

WKFのルールはJKFのものとは比べ物にならないほど実践的になっています。ポイント制でなければほぼ総合格闘技の立ち技に近いんじゃないかと思うほど多彩な動きや技を認めています。日本人の優勝者も目立ってきましたが、やはり表彰台に上がるのはヨーロッパの選手が多いです。

彼らは積極的に空手以外の技術を取り入れています。総合、柔道、ボクシング、サンボ。あらゆる格闘技の良い部分を自分の空手に取り入れようとしています。こうなると空手だけでは太刀打ちできません。

画一的に型や基本動作を繰り返す練習が大半を占める稽古では、試合で勝利するのに遅れを取ります。

日本人は何かと一つの技術をとことん信奉し、その他の格闘技術について批判的になりがちですが、空手に関わらず、いいとこ取りでも、様々な技術を様々な格闘技から取り入れることは自分の空手スタイルを作る上で非常に重要です。

空手には長所もありますが、もちろん欠点もあります。その欠点を別の格闘技の技術で埋め合わせる柔軟性を日本人の空手家には持ってもらいたいものです。

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