技を繰り出す時の力の根源は科学的に見れば体の各部の筋力と関節の連動の何者でもないですが、ここでは少し感覚的な話をしたいと思います。
私が長年の格闘技人生で習得した技を繰り返し鍛錬してわかったことは、力の源は足元にあるということです。もっと言えば、地面、重力が技を繰り出す力の根源になる感覚を得たといったところでしょうか。
何をいっているんだ?こいつは?と思われるでしょうが、私の突きや蹴りのエッセンスは重力を利用している感覚によるものです。先程も言いました通り、これは極めて感覚的で、科学的に見れば筋力が力の発生源となり関節を効率よく動かして攻撃部位に力を伝えているに他なりませんが、感覚を掴んで技を繰り出すのとそうでないのとでは技の質に違いが大きく出ます。
また自分の筋力に頼りきった体の使い方は身体能力の衰えとともに攻撃の精度は落ちていきます。なるべく現在の環境で揃っている条件を最大限利用して技を繰り出す時の力とすることが私は合理的に思えます。
さて私が技を繰り出す時に意識しているのは重力と書きましたが、具体的には、相手に攻撃を加える際に地面を蹴るような形で下半身に力を加えます。この時に一瞬下半身を脱力すると地面から力が足裏を通して反発するような感覚が得られるのです。
皆さんも是非試していただきたいのですが、たった状態でぐっと力を足を踏み止めて、一瞬だけ脱力すると反発する力が足裏を通して浸透するような感覚を得られると思います。
実はこのエネルギーをうまく関節に伝えて、技を繰り出す時の力の根源としているのです。具体的に、攻撃を加えると同時に足を踏み込みますが、一瞬脱力して、反発力を体内の丹田(臍の下)に取り込み、腰を回転させ、肘を伸ばし、腕を回転させて丹田に溜め込んだエネルギーを正拳突きに伝えるという感覚です。この動作をほぼ同時に行いますが、下半身の踏み込みが若干突きよりも早いイメージです。
頭で考えて動作を行うとまずどう体を動かしていいかわからないと思います。この技術は数鍛錬の賜物です。何回も同じ動作を繰り返すことによって身につく感覚です。
ですが、実際のところ、科学的に検証してみると恐らくですが、攻撃の最中に足の筋力に脱力が見られなかったり、丹田にエネルギーを蓄積しているのは単に腹筋に力が入っていたからという結果が出るでしょう。
しかし、この感覚を得てから攻撃の精度は自分でもはっきりわかるくらい変わりますし、無駄な力みで体が疲弊してパフォーマンスの精度が著しく低下するということもなくなりました。
私は体の使い方において、感覚は筋力以上に重要視している部分でもあります。なので数鍛錬による技の感覚の習得は私のトレーニングのほぼメインになっています。
話は逸れましたが、格闘技の感覚、力の出所に関しては人それぞれ賛否両論あると思いますが、私の長い格闘技人生の中で得られた感覚の中で最も技の精度があがったのは、地面の反発力を利用して、エネルギーを攻撃に伝えるという方法です。
是非皆さんも自分の技を研究して自分独自の感覚を作り出してください。