空手の技にダッキングやスウェーが存在しない理由

伝統派空手のディフェンスには現代の格闘技のようなしゃがみこんでダッキングでパンチを躱したり、スウェーによって上半身を後ろに仰け反らせて相手の攻撃をかわしたりする技術はありません。

現在全空連などでもダッキングやスウェーなどのを駆使して相手の攻撃を掻い潜り自分の攻撃を効果的に当てる間合いに入る技術が研究されています。空手は現代の攻撃を躱す技術に当たる「往なす」という技がありましたが、これはそもそも現代の格闘技のように相手の間合いに積極的に踏み込んで攻撃を躱すという技術ではなく、攻撃を誘い崩すための受けわざとしての要素が強いです。

もともと空手の技術は素手の突きや蹴りのみを想定して作られたものではありません。相手が武器を使うということも想定に入れていたため、パンチが交錯する間合いでの戦闘はそもそも考えられていなかったのではないでしょうか。

実際の戦闘スタイルについては空手の口伝が失伝してしまっているため、明確に断言することは出来かねますが、現代の伝わっている空手、本土に伝わる以前の空手の考え方を鑑みるとヒットアンドアウェーが主流だったのではないかと私は推測しています。

また接近戦になれば、投げ技を使用するかもしくは相手の衣服をつかんで相手からの攻撃を封じ、相手の体をコントロールして有利に攻撃する方法も形に残っています。

では空手の技術では伝統的にどのようにして相手からの攻撃を防ぐのかということですが、先ほども言いましたとおりヒットアンドアウェーを駆使しながら、相手の攻撃を受け技でブロックしながら同時に突きを繰り出していたのではないかと推測しています。

受け技は形ではほとんどの場合一つの挙動として盛り込まれ、単体で使われることが多いでが実際は、受け技と攻撃は同時に行われます。受け技で相手の攻撃を往なしたり、潰したりしつつ同時に別の手で攻撃を加えるという形で実際には使用されていたと思います。

相手の攻撃を防ぐ方法は離れるか、チャンスと捉えて攻撃を往なす、潰しながらカウンターを狙うのどちらかです。

特に極端に接近してダッキングでかわしたり、スウェーで攻撃をギリギリに見切ることができるのはその攻撃が、躱している最中にヒットしたとしても致命的なダメージを負わないと知っているからです。

接近したら、袖を掴まれて目を潰そうとしてくる、組みつかれて投げられる、ポケットからいきなりナイフで刺してくる、鉈を振り回しているといった状況を想像したらおいそれとボクシングやキックボクシングの打ち合う間合いには入っていけないと思います。

こうした状況の中で戦うと相手に触れる機会というのはそう多くありません。戦っているほとんどの時間は相手との間合いのせめぎ合いです。その中でいかに相手のスキをついて攻撃するかが重要です。そのため攻撃は単発が多く、攻撃が入った後は足を払ったり、投げたり、組み合ったりして相手に攻撃をさせないというのが空手の戦い方です。

側から見れば少し相手が動いただけでも反応し後ろへ極端に下がったり、相手の反応を読みすぎて攻撃を途中で中断してしまったり、臆病だなという印象を受けるかもしれませんが、相手が武器を携えて一発で致命傷になる攻撃を仕掛けてくるという前提でみると、気を勇んで積極的に前へ前へと攻撃するスタイルはリスクでしかないということになります。

ということで空手にスウェーやダッキングなどの打撃格闘技ならではの技術が存在しないのは空手が実戦で使われていた当時の戦い方の前提条件が反映しているからです。無論現在の空手は実戦よりも試合でいかに勝つかが優先されるため、こうした前提条件は忘れ去られ逆にボクシングなどの直接打撃格闘技との技術交流が盛んになってます。

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