もはや空手とは言えない現代の伝統派空手の実態

出典:産経新聞

これは昨年2018年にインドネシアジャカルタで行われた世界空手道選手権での女子組手決勝、東京オリンピックの代表と目される植草歩の試合の映像の一コマです。空手を嗜んでいる人でこの写真を見て違和感を感じない人はいないでしょう

私が感じる違和感の正体

この植草選手の上段の逆突きを見てください。手を握っていません。拳を作っていない状態で逆突きを放っています。昨今の全空連、世界空手道連盟をはじめとする伝統派空手の競技では植草選手に限らず多くの選手が当たり前のように、拳を緩めて相手に突きを放っているケースをよく見ます。もはやこれは空手の突きとは呼べない代物になっています。

ルールの中で最大限ポイントを取れる合理的な技の形を研究した結果編み出された攻撃の形で、拳を握って突きを突くなどもはやスピードが落ち、相手に技の起こりを悟られる原因になると考えている人も少なくありません。

JKF,WKFの試合を見ると90年代国分や内田が活躍していた頃の寸止めだけどマジで当たったら無事では済まない「強い空手」を見ることはなくなりました。

試合で使われる全ての技が、勝つために合理化した技に成り下がっており空手の美学や理念など微塵も感じられなくて残念極まりない。空手の理念から遠く離れすぎた組手の様相に私は愕然としています。

選手が現代の組手スタイルを正当化しもはや開き直っている有様

以前植草選手がテレビに出演した際に腕のリーチを稼ぐために、拳は握らずに拳サポの厚みと合わせてリーチに活用するという節の発言をしていたのを覚えています。また常日頃から審判に印象が良い突き、審判に見せる為の突きを研究しているのだと。

彼女は、試合での勝負の形勢を握るのは試合と試合を形作るルールのみぞ知るといった感じで、完全にポイントに反映されない部分に関しては度外視してしまい、眼中にない感じです。

現代の空手では技の当たりの強さや、技を仕掛けた後の斬新などはポイントに考慮されてはいません。どちらがいかに速く技が的確に入ったかで判定されます。判定に反映されない部分はいかに空手の本質であっても見過ごされています。

完全に空手のあり方をルールに盛り込むというのは非常に難しいでしょうが、少なくとも空手競技に参加する選手一人一人には技をどのように運用して、どのように倒し制圧するかまで考えて競技に望んで欲しいと思っています。

勝ち負けを意識するとそうも言っていられないでしょうが、年々ルール変更によってスポーツ化する空手競技にもう少し空手らしさを取り戻して欲しいと思っています。せめて拳くらはしっかりと作って突きをして欲しいものです。

頻繁に追加されるルール

ここ数年は総合格闘技にはまって全空連の試合の様子を見ることもなかったんですが、先日たまたま動画でおすすめに出てきた全空連の試合を見てまずびっくりしたのが、動かない選手に対しての「指導」という反則の措置が追加されていたことです。

柔道では試合のこう着状態を打開する為、選手両者に与える反則を与え強制的に時間内で決着がつくように配慮されてます。というのもトーナメント制の試合は数日から一週間で全ての試合をはっきり勝敗をはっきり決めなければなりません。

時間制限のある中で効率的に試合の決着をつけるためには反則ルールを設けて強制的に選手を動かして勝敗に白黒をつけるのです。このルールの欠点は試合の決着がつきやすい一方で、選手の攻撃のタイミングを意図的に操作して奪ってしまっています。これでは大会運営側が選手の実力を尊重して試合を運営しているとは言えません。全て試合を開催している側の都合でルールが決められています。

空手にも柔道と同様の反則ルールが設けられた結果、大胆な大技や連続攻撃を多発するようになっています。

本来空手の試合は静かなもので、間合いの探り合いが試合時間の8割で攻撃は一瞬で決まります。そのため昔の日本空手協会の試合を見て見ると決勝などは延長戦の連続です。試合の大半はにらみ合いのこう着状態、間合いを取り合って、三回の延長の末勝敗が決したという事例があります。

観客は見るに耐えない退屈な試合ですが、本来真剣勝負とはそういうものです。反則ルールは真剣勝負のリスクを度外視してしまい、安易に技を多様するように選手の戦い方をを変えています。

実践の戦闘がない現代では、練習の方法も、戦い方も全て試合のルールに依存しやすい傾向にあります。技術は時代とともに変化していくものですが、安易に競技のルールを変更することで空手の本質が失われる危険性があります。

まとめ

現代の伝統派空手は形基本と組手がかけ離れすぎて稽古に矛盾が生じてます。海外の選手たちはもはや基本の形稽古には型選手出なければ見向きもしません。むしろ、総合やキックボクシングのテクニックを取り入れています。当然の流れです。

現代のWKF,JKFが空手団体と名乗るなら少なくとも試合のルールを決定している人間が本来空手とはどういうものかということを競技空手とは別に熟考する必要があると思います。

今の空手界にはもう少し原点に立ち返って試合のルールを再考してほしいです。

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