刻み突きは半身から繰り出す鋭く早い動きが特徴で伝統派空手では先制点を挙げやすい技として認知されています。この記事では伝統派空手の組手基本である刻み突きの突き方、特に基本的な鍛錬法について解説していきたいと思います。
ジャブと刻み突きの違い
腰を回転させ半身になって繰り出す刻み突きを初見すると、キックボクシングやボクシングなど直接打撃系格闘技のジャブを連想される方が結構多いと思いますが、刻み突きとジャブの体の使い方、技に対する考え方は根本的に違います。
ジャブは、ジャブの後に来るストレートの布石だったり、または相手への牽制として使うことが一般的でジャブでKOしにかかるという発想はないはずです。
一発目の攻撃はガードされやすいため、ワンツーのコンビネーションでストレートを効果的に相手にリーチさせるためにワンのジャブで揺さぶりをかけるというのは最も基本的なワン・ツーの考え方です。
そのためジャブは腰の可動域は極めて狭くどちらかと言えば手打ちに近い状態です。
これに対して刻み付きは、腰を最大限回転させ、重心を前に移動させながら相手に突き込むので牽制ではなくストレートパンチそのものです。
刻み突きも同様に「刻み突き・逆突き」といったワン・ツーのコンビネーション技があり、牽制で使うことももちろんありますが、刻み突きの技単体でも十分に威力を発揮します。
全空連では、技の起こりを極力小さくして、素早い運足とともに一気に飛び込んで相手の機先を制します。刻み付きは速く気づかれにくいため、この技に精通している選手は試合の前半でポイントを稼いでいます。
刻み突きは前手で突きますが、牽制ではなく相手を十分にKOするポテンシャルがある技いです。
ジャブと刻み突きの立ち方・前屈立ち
刻み突きにかかわらず組手基本の立ち方は全て前屈立ちになります。前屈立ちは肩幅に開いた足を前後に開き、前足の膝を曲げて、前方に重心をかけ、後ろ足を伸ばした立ち方です。
前屈立ちポイント1
前足の膝の角度は、前屈立ちの姿勢になった時に前足の膝からつま先が見えないこと。
前屈立ちポイント2
後ろ足の膝裏を伸ばし、ハムストリングを伸長する。
前屈立ちポイント3
股関節の筋肉を前足の太もももの内側につけ、股関節を絞る。
前屈立ちポイント4
腰をしっかり正面に向ける。
以上4つのポイントをしっかり確認して前屈立ち正面の姿勢になってください。この姿勢が刻み突きを突く時の基本姿勢になります。
半身正面の体の使い方
ハムストリングをしっかり伸ばして前足側の股関節を閉じしっかりと腰が正面を向いている前屈立ち正面に対して、半身は後ろ足の膝裏を少し曲げ、ハムストリングを緩め、後ろ足側の腰を後ろへ回転させます。
半身の場合前足側の腰と肩が正面に押し出され、反対側の肩と腰は後ろへ回転します。
前屈立ち正面から前屈立ち半身になる上での最大の注意点は重心です。腰が移動して体が半身になったとしても重心の位置を変えてはいけません。 重心の位置は前屈立ち正面でも前屈立ち半身でも同じ位置になります。
縦手刀の構え方
半身になって刻み突きを突くわけですから、反対の手で構えの姿勢をとり、その姿勢から刻み突きを突かなければなりません。
縦手刀は本来逆突きを突く方の手で構えなければなりませんが、腰の位置は逆付きの時の前屈立ち正面とは異なります。「逆半身」という姿勢をとります。
本来、空手の受け技は全て半身の姿勢をとります、刻み突きを突くときのスタートポジションである前屈立ち縦手刀も例外なく半身の姿勢です。
この「逆半身」の姿勢は少し特殊で、前屈立ち正面の姿勢からさらに股関節を絞りおおよそ逆側に半身の姿勢をとります。腰がねじれていると表現してもいいかもしれません。
この姿勢で縦手刀を受けるわけです。
前屈立ち刻み付きの突き方
まず中心軸を意識して体の左半身と右半身を攻撃時に入れ替えるイメージをしてください。例えば、左手で刻み突きを行う場合、逆半身縦手刀の時は右半身が左半身の前に移動し、刻み突きを突く場合はその逆で左半身が右半身と入れ替わるといった感じです。
実際腰は前後に回転しますが、上半身の動きは円運動ではありません。右左半身が前後に入れ替わることによって効率的にエネルギーを突きに伝えます。
前屈立ち刻み付きのポイント1
半身になっても重心を移動させない、重心は逆半身でも正面でも、半身でも重心は同じ位置。
前屈立ち刻み付きのポイント2
腰を回転させ、半身になると同時に、前足をしっかり踏み込む
前屈立ち刻み付きのポイント3
刻み突きは上段が基本。拳がしっかり自分の顎の高さを突きます。
初心者の刻み突き鍛錬法
初心者はまず動きを限定して一つひとつ体の運用方法を学んで行く方が体の使い方を覚えやすいと思います。
まず初心者は、前屈立ちではなく、その場立ちになって突きのコース、そして腰の動かし方を集中的に学んでいきます。
まずその場立ちになったら縦手刀を構えます。その後号令とともに刻み突きを突くわけですが、刻み突きを突く方の腰を前に持ってきます。この時に刻み突きを突く方の足をしっかり踏み込み、引き手を取る方の足を若干緩めます。そうすると自然に刻み突きを突く方の腰と肩が相手の正面に向きます。
その場立ち刻み突き ポイント1
膝から下は動かさないということを意識してください。膝から下が動いてしまうと腰の回転がうまく突きへ伝わらなくなってしまい、突きの威力が減退してしまいます。しっかりとその場立ちの足を固定して突きを放ってください。
その場立ち刻み突き ポイント2
その場突き正拳突きのように突き終わると同時に前に出した腰を戻して、腰の切り返しを行わないようにしてください。腰が前に出た姿勢が半身になりますので、刻み付きの突きて腰が前に出たらそこで姿勢を維持してください。
その場立ち刻み突き ポイント3
頭の高さが変わらないようにしましょう。
運足による刻み突き
運足による刻み突きは前屈立ちの状態から一歩踏み出しながら刻み突きを突きます。
この運足の方法で突きを突くと重心が前に移動します。左刻み付きを運足の移動によって突く場合、右足前前屈立ちの状態から一歩前進して左足前全履だちの状態で突きを繰り出します。
運足による刻み突き ポイント1
前屈立ち縦手刀の姿勢から後ろ足を前に踏み出す時、前足と後ろ足が横並びになり重なる時までは重心は前屈立ち縦手刀の重心の位置と同じです。
そこから後ろ足を前に踏み込むと同時に、前足が後ろ足に転じ、後ろ足で地面を蹴りながら重心を前に移動させます。
運足による刻み突き ポイント2
左手で刻み突きを突く場合は、右足前前屈立ちになり縦手刀は右手で構えます。
運足による刻み突き ポイント3
体の切り替え(左半身と右半身)の切り替えは相手に攻撃が届く直前で行います。そうすることで相手にはわかりにく突きを繰り出すことができます。
まとめ
刻み突きは冒頭で話した通り牽制ではなくストレートよりの技です。動きが小さくならないようにしっかりと体の各関節を正確に動かし、体重を乗せて突きましょう。半身の姿勢での攻撃ですのでどうしても、構えが半身だと可動域が狭くなってしまい突きの威力が減退してしまうことがあります。
しっかりと基本で日頃から腰の可動域を広げ、足をしっかり踏み出して突き威力が出るように練習しましょう。