
先日、たまたま入ったサウナで元東海大学ボクシング部コーチの方にお会いし、格闘技の話に花を咲かせていました。現在は60代で現役時にはかなり苦労された方で、現在でも左目があまり見えない、右耳が全く聞こえないなど、現役時に負ってしまった後遺症が残っているようです。
わたしは唐突にチャンピオンになる秘訣はなんですか?と質問しました。返ってきた答えは意外にも
ということでした。
彼の持論によると、どんなに優秀な選手でも怪我をすればつかめるチャンスもつかめなくなるそうで、多少練習をサボっても怪我さえしなければ現役時につかめるチャンスはいくらでもあるとおっしゃっていました。
チャンスを逃せば今まで強化してきた練習が全て無駄になる、インターハイなどで数々の優秀な戦績を残してきたにも関わらず大学で怪我に悩まされ、早くも引退に追い込まれるケースは枚挙にいとまがなく、全日本でも王座をとる可能性のある逸材は怪我に悩まされ、それまで目立った戦績がなく怪我の少ない新人が徐々に頭角を表すと言っていました。
彼は、試合前の追い込みを除いて、大学の体育会の部活の平常時の練習量の多さやストレッチに割く時間の少なさを嘆いていました。徹底的に追い込む日本の伝統的な体育会系の風潮そして柔軟体操を軽視する文化、ひたすら体力の強化に時間を割く練習メニューに違和感を覚えたと言います。
特に練習前後のストレッチは、最低合わせて1時間は必要だそうです。
と言うことでこの記事では怪我をしないための柔軟性の重要性について書いて行きたいと思います。
本記事の目次
- 静的なストレッチが柔軟性には最適
- 過度な筋トレは控える
- 大きな関節の柔軟性を高める
柔軟性の重要性については山本Kidも度々雑誌のインタビューで説いていたのを覚えています。現在ジョーブログで生前の山本kidが実践するストレッチメニューの一部を動画で閲覧することができます。
※動画では初動負荷理論を利用した動的なストレッチを行なっています。
静的なストレッチが柔軟性には最適
関節の可動域に確実に影響を与えるのは静的ストレッチです。
動的なストレッチは可動域を広げてくれるものではなく体を温めるための準備運動の代わりにしかなりません。なぜなら関節の可動域の中で繰り返し体を動かしているだけだからです。
また筋肉は動的な動きに対して反発する性質があるので、関節の可動域以上に体の部位を動かそうとすると痛みが走り、筋肉が関節を守ろうとするため力みが入り萎縮します。
そのためリラックスした状態での静的なストレッチが限界可動域を広げるのに適しているのです。
関節の限界可動域が広がれば、関節に直接かかる負担をその柔軟性が外に逃がしてくれます。
ただ筋肉には張力があり一度伸ばした筋肉はゴムのように元に戻ってしまいます。ストレッチを行なった際5分からせいぜい2時間でもとに戻る、と言われています。そのため限界可動域を広げるためには毎日習慣的にストレッチを行なって少しずつ柔軟性を高めていくしかありません。
静的なストレッチによって大部分の疲労を取り除き、怪我を予防できると思います。
過度な筋トレを控える
柔軟性に問題があると思った時点で現在の練習内容を見直して体の柔軟性を高めることを意識したトレーニングに変えないと追い追い怪我のリスクが高まります。
試合前ならば致し方ありませんが、平常時のウェイトを一切控えるなど大胆な方向転換をして集中的にストレッチを行わないと効果的に柔軟性を高めることはできません。
わたし自身現役時に練習、ウェイトトレーニングと並行してストレッチに励んでいましたが、数年立っても柔軟性に大きな変化は現れませんでした。そしてそれまで熱心に取り組んでいたウェイトトレーニングによる筋トレ(自重トレーニングは継続)を一切辞めてストレッチを継続したところ4ヶ月ほどで柔軟性に大きな変化が現れました。
そこからストレッチを継続しながら徐々にウェイトトレーニングを開始しましたが、それ以来柔軟性が低くなったりはしてません。
大胆な練習メニューの改革にそれまで努力してつけた筋肉や体力が落ちるのではないかといった不安に駆られてなかなか運動強度が極めて低いストレッチの優先順位をあげられないと思いますが、怪我をして何ヶ月も動けなくなる可能性を考えると怪我を未然に防ぐための入念なストレッチにかける時間など極めて安い投資です。
常時体のどこかに疲労を抱えていて日常的に倦怠感を抱えている場合は、オーバーワークとストレッチ不足です。
動画で山本kidも言っていますが、ストレッチによって柔軟性を高め動きたくなる体を作ることが重要。もし疲れを抱えて練習に行きたくないと感じるようであれば完全に体のケア不足です。アスリート失格です。
大きな関節の柔軟性を高める
全ての身体の運動は大きな関節から始まっています。格闘技であれば、パンチは肩甲骨から、蹴りは股関節からです。これらの大きな関節の柔軟性が確保できないと徐々に小さな関節へと波及的に怪我のリスクが高まります。
なぜならば大きな関節が柔軟性不足で動きが制限される分、小さな関節周辺の筋肉に無駄な力みが生じて大きな負担が生じるからです。
総合格闘技の試合など不自然なほど筋肉を発達させた選手はやはり動きが硬かったりします。彼らは本来体の柔軟性があれば体の使い方次第でスピードや勢いを確保できるのにも関わらず、柔軟性に問題があるためほとんど上半身や下半身の力みでそのパフォーマンスを維持しています。
怪我しないうちはこのスタイルで通用するかもしれませんが、これでは長い間現役を続けるには非常に不利な体です。
まずは静的なストレッチを行い、必要に応じて初動負荷理を利用したストレッチでこれらの関節の柔軟性をケアしてください。
まとめ
元東海大学ボクシング部コーチも言っておられましたが、格闘技の選手は鍛え続ければ最強の体が手に入ると思い込んでいます。人間の体は有機体で筋力や体力に限界があります。
特に戦績を残している選手は自分の体を過信しすぎる傾向にあります。過信しすぎて自分の体の状態をおろそかにしてしまっては勝ち続けることは不可能です。
体の限界を知って、限られた可能性の中で体を最大限に使って勝つ方法を模索しなければ現役を引退後の人生にも支障をきたしてしまいます。
相手に勝つためには強度が高い練習は必要ですが、自分の体の状態を知り大きな方向転換を図りストレッチを充填的にやる勇気も必要です。
そももそも人間の体は長時間激しい運動に耐え得るようにはできてないのですから頭を使って練習メニューを考えなければいけません。

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