
外国人格闘家の体躯を見るとボディビル並みの突出した筋肉に覆われ、凄まじいパワーで相手を圧倒しているイメージがあると思います。特に往年のK-1ヘビー級のスター選手の体の馬鹿でかさは半端ではありません。
例年大晦日に開催される格闘技イベントに出場する格闘家はやはり相当な筋力強化を図っておりかなりバキバキの体になってます。
このような格闘家の体目にすると、筋力こそが攻撃の破壊力を支えていると思いがちですが、実は打撃系の格闘技は空手、ボクシングにかかわらず、例外なく足腰を含めた総合的な体の使い方で攻撃を繰り出すことが基本です。
筋肉バキバキの選手も意外かもしれませんが攻撃の際に脱力して攻撃が相手に届くところでタイミングよく力みを加えてます。
脱力する理由は諸説ありますが、一般的に攻撃のスピードを速め、動作の起こりをなるべく隠し、下半身を起点とした大きな体の運動エネルギーを腕の力みによって殺さないことがその理由になっていることが多いです。
ということで本記事では一般的なパンチの打ち方、考え方について解説していきたいと思います。
本記事のテーマ
本記事の目次
- 打撃運動の起点は足
- 腰の捻転によって上半身を動かす
- パンチは肩甲骨で打つ
- 腕は脱力、打つ寸前に緊張させる
- 無理な力みを無くしてスムーズにパンチを打つためには関節の柔軟性が必要
打撃運動の起点は足
全ての力の源は足です。下半身の重要性については亀田興毅も指摘しています。
下半身の地面の蹴り出しの力を上半身に伝えます。両足で垂直にジャンプすると当然ですが体が真上に上昇します。言うなればこのエネルギーを上半身に伝えてパンチを繰り出すというのが打撃の基本的な考え方です。
構えた時、ジャブの場合は前足、ストレートの場合は重い後足を蹴り出すことによって質の高いエネルギーを得ることができます。
腰の捻転によって上半身を動かす
パンチを打つ際の足の蹴り出しによるエネルギーを効果的に上半身に伝えるには腰の捻転が必要です。この際にポイントになるのは股関節動かし方と重心の位置にポイントがあります。
股関節の動かし方
股関節は太ももの骨である大腿骨と、骨盤をジョイントする関節です。この関節をうまく使うことで足の力を上半身にうまく伝えることができます。
ストレートの場合の股関節の使い方
例えば右ストレートを打つ場合は、構えたところから後ろ側の足(右足)の地面を押し出し、前方の左大腿部の股関節を骨盤に対して直角になるように閉じます。
この時に同時に右腰が前方に捻転します。詳しい股関節の使い方についてはこちらの動画で説明しています。
ジャブを打つ場合
左でジャブを打つ場合は、構えた際の左の前足で地面を蹴って股関節を動かします。右ストレートを放つの場合は前方の左の股関節を閉じる動作を行いますが、ジャブの場合は前方の左の股関節を開き逆に後ろの右股関節を閉じます。
構えたところからジャブを放つ際は左腰がより前に突き出て、右腰はさらに後方に捻転します。
重心の比率
ジャブとストレートでは体の使い方が異なるので多少重心に変化をつけなければなりません。
ストレートの場合
ストレートの場合は相手にダメージを与えることが目的になりますので、重心の比率は前足の方が高めで後ろ足は低めです。私の場合は前足7,後ろ足3の7:3の比率でストレートの重心を固定しています。
ジャブの場合
ジャブの場合は相手にダメージを与えるほか、牽制によってストレートのタイミングを計るという目的もふくまれますので、前足にかかる重心はストレートより低めに固定します。
私の場合は前足6,後ろ足4の6:4の比率です。
パンチは肩甲骨で打つ
足で得たエネルギーを股関節の運動によって腰の捻転させ、上半身を効果的に操作するわけですが、上半身にエネルギーを伝えてからすぐに腕の力でパンチを繰り出してはいけません。
腕の力はこうした一連の体のエネルギーを殺してしまいます。半身で構えた状態から腰を捻転させ体が回転した時に自然に腕にエネルギーを伝える関節は肩甲骨です。
この肩甲骨を背中の筋肉から剥がすイメージで前に押し出します。これで自然に体の勢いを腕に伝えることができます。
肩甲骨の柔軟性は常に維持しなければなりません。肩甲骨の柔軟性が失われると結局腕の力に頼らざるを得なくなります。そうすると体の勢いを全て効果的にパンチに伝えることができなくなってしまいます。
腕は脱力、打つ寸前に緊張させる
基本的に肩甲骨から前の腕は付属品です。ピストルで例えるなら銃弾です。足で得たエネルギーを股関節の運動によって腰の捻転させ、上半身の回転と同時に肩甲骨を前に押し出したところでパンチを打つためのエネルギーを生み出す運動は終わっています。
あとは単純に腕を脱力させて、拳をコントロールしつつ、相手に当たる直前で前腕部を力んでパンチを打ちます。
前腕部の力み加減はバンテージを巻いてグローブをつけているか、オープンフィンガーグローブを着用しているか、素手かどうかで変わってきます。素手に近い状態になればなるほど前腕部と拳にある程度の力みを加えないとこちらが怪我をししまいます。
グローブを着用している場合はほんの直前で大丈夫だと思います。二頭筋肉は完全に脱力です。
無理な力みを無くしてスムーズにパンチを打つためには関節の柔軟性が必要
とにかく関節の柔軟性はパンチを繰り出す際はかなり重要です。パンチのスピードもパワーも全て関節の柔軟性が鍵を握っています。
筋トレによる体の強化よりもストレッチの方が重要。空手や格闘技をやる人ならなおさら
無駄な力みはさらなる体の負担を増やし怪我の温床になります。また技の起こりを相手に感知されやすく非常に読まれやすいパンチになってしまいます。
柔軟性は筋トレと違ってなかなか効果は現れませんし、筋トレと並行して大きな柔軟性は得られません。まずは徹底的に体の柔軟性を高めることが大事。
筋トレは補強程度で十分です。